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[全文掲載]書籍「岐阜発 イノベーション前夜」執筆を通して考えたこと(3)

2020.12.10

書籍「岐阜発 イノベーション前夜」執筆を通して考えたこと

(日本生産性本部茗谷倶楽部会報第78号寄稿文)

3/6

三輪知生(経営塾2期)

書籍の企画構成を考える上での要点

日本人の情緒的な文章構成である「起承転結」とは全く異なり、論理的構成であり聴き手を短時間でその気にさせる(購買意欲をそそらせる)典型的なプレゼンテーションスキル(文章構成も同じ)に、「モンローの動機配列」と呼ばれるパラグラフ(配列=段落・構成)があるのをご存知でしょうか。アラン・モンローという心理学者が定説化した文章構成の配列で、アメリカ系企業のCMやショッピングチャンネルで多用されてきた手法です。短時間(15秒や30秒のCM枠)で購買に直結させる、効率の良い最も効果的な伝え方と言われています。

紙面の制約もあり、詳細については「アラン・モンローの動機配列/説得技法」で検索して戴くこととしますが、欧米系の人々は常識的に知識として習得し、実践の場で有効に活用しているのです。わが国の教育が従来「読み書き算盤」を重視し、先生の教えに忠実に、そして正確に記憶して試験で解答することが第一義とされてきたことが、弱みとして指摘される局面であると言えるでしょう。自ら考えて新たな価値を創出することを不得手とするだけでなく、教えられていないので、相手の心に訴えて行動変容を促すスキルを身につけていないのです。

著書では、これまで関わってきた岐阜県内の中小企業による経営革新(小さなイノベーション)の実践事例を紹介しています。執筆するに際して最も重要であると考えたのは、前述の「相手の心に訴えて行動変容を促す」ことです。学者や研究者の論文ではないのですから、中小企業論やイノベーション論における過去の研究との整合性や検証を第一義とするのではなく、実践事例を通して、読者が実際に経営革新や(阻害要因が多くてうまく進まない)イノベーションを実践していく先導役となることです。そのための「動機配列」に思案を重ねました。

永らく中小企業支援の現場に身を置いてきたことで、紹介する事例には数多く接することができました。一方で、どのように文章で伝えれば良いのか、これまでの経験としてはテレビ番組用にシナリオを執筆してきたことはありますが、書籍となると、映像が勝負となるテレビとは事情が異なります。参考とするべく、池井戸潤や江上剛の企業小説、話題作となった「トヨトミの野望」などを読み漁りました。さすがのベストセラー小説は表現力が豊で、差し迫った期日のある執筆に際して、とても追いつけそうにないと表現力での勝負はあきらめました。

(4)へ続く