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[シナリオ]Turning Point モノづくり編102 "原点回帰の発想"で大ヒット商品を開発!

2018.07.22

"原点回帰の発想"で大ヒット商品を開発!

 

有限会社一山製陶所(土岐市)

[全文公開]番組シナリオ

1.背 景

注文してから6ヶ月待ちでしか手に入らないという魔法の土鍋が、百貨店やインターネット上でヒット商品となっている。土鍋と云えば手軽に味わえるおでんや煮込みうどんを思い浮かべるのだが、この鍋ではカレーやポトフが抜群に美味しくできるという。

セラキュートと命名されたこの無水調理のできる土鍋=耐熱セラミック鍋は、鍋本体と蓋が接する平面が極限まで平坦に磨かれているために、蓋の自重だけで密着して空気や蒸気を外に漏らさず、素材の持つ水分だけで調理ができてしまうという優れものだ。

熱しやすく冷めやすい性質を持つ鉄の鍋とは異なり、セラキュートはセラミック= 陶器でできており、土鍋の特徴である保温効果、遠赤外線効果によって野菜や肉の素材の旨さをしっかりと引き出す。さらに表面全体のコーティングにより、焦げつきにくい。

2.由 来

土岐市は東濃に位置しており、陶磁器(生活食器)の実に7割の生産量を誇っている美濃焼最大の一大産地だ。しかし最近では、プラスチックの食器や中国など海外からの輸入品に押され、陶器の生産量は全盛期(H3年)から4分の1にまで減少している。

また、女性が社会進出して専業主婦が減り、惣菜をプラスチック容器で購入してそのまま食卓に出す、食器の洗い物が嫌がられるといったようにライフスタイルが変化し、日本の食卓事情が合理化・簡素化する傾向にあることも陶器業界の逆風となっている。

一山製陶所は従来、売れる商品の目利き、売り先の開拓や販売を商社に依存し生産に専念する美濃焼メーカー=窯元であったが、大幅な生産量減を看過することができず、自らオリジナル商品を開発して直販に乗り出すという経営革新に取り組むこととした。

3.本 題

公的機関の支援(地域活性化ファンド)も受け、開発に2年の歳月をかけて苦労の末に完成したのが、現在注文から6ヶ月待ちと人気沸騰中のセラキュートだ。機能性とデザイン性を兼ね備え、美味しい料理ができることを前面に打ち出して大ヒットに繋げた。

試作の過程では、無水調理ができるように鍋と蓋の接合面を限りなく平坦にする、 焦げ付かなくするためのコーティング材の選定、窯焼きで変形しないようにすることなどに腐心。また、完成してからもどのように打っていけばよいかについて頭を悩ませた。

売るための準備として、いかに美味しい料理ができるか直接お客にアピールするために知人である料理研究家に依頼してレシピ集を制作、自らも試食を重ね体重が増えてしまったというオマケ付き。パンフレットやホームページも美味しさを前面に準備した。

4.解 説

企業が新しい仕事を始る場合、まず新しい設備を導入しようと考えます。しかしそれでは利益を確保する前に、大きな重荷を背負ってスタートすることになってしまいます。ご覧戴いた伊藤専務は、「今ある人材」「今ある技術」「今ある設備」から「今何ができるのか」を考えて、無理なく新たな挑戦をスタートしました。

また、料理研究家という身近な専門家にお願いして、優れたお鍋という「モノ」から、美味しい料理という「コト」へとセールポイントを転換したのです。環境の変化に適応しつつ、原点に回帰する発想とたゆまぬ努力、そしてお客様視点の発想をしたことが、成功への分岐点になったと云えるでしょう。

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