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[シナリオ]Turning Point 飲食編302 "情報収集"して"強みを活かす仕組み"を作る!

2018.07.04

"情報収集"して"強みを活かす仕組み"を作る!

 

HANAMAZA PAN(岐阜市)

[全文公開]番組シナリオ

1.背 景

ここは岐阜市中心部にある、みんなの森ぎふメディアコスモス。オープンして1年半が経過し、一階は地域の交流拠点として、そして二階は岐阜市立中央図書館として、しっかり市民に定着し毎日大勢の人で賑わっている。その入り口前の広場はオープンスペースとして解放されており、移動販売車がやってきては、訪れる人々を楽しませている。

そんな中に、高校生や小さな子供連れのお母さんに人気のパンの移動販売車がよくやってくる。販売しているのはイスラム教徒が身にまとう民族衣装の女性だ。軽自動車を改造した移動販売車の中を覗いてみると、どれも美味しそうなパンが並べられている。今日焼きたての惣菜パンや菓子パンの数々は、あっという間に売り切れてしまうと云う。

なかでも一番人気の商品はカレーパンだ。イスラム教徒の戒律に従った「ハラル対応」のレシピとなっており、豚肉は使わずに鶏肉を使用。また、厳選したスパイスを用いたカレーのルーは1から手作りしている。パン生地の素材にもこだわっており、丁寧な手作りの味と普段口にしないアジアン・テイストが重なって、人気の秘密がそこにある。

2.由 来

この移動販売車でパン店を経営しているのは、岐阜大学に留学して以来家族で岐阜市内に定住しているインドネシア人女性のシティ・ヌルジャナーさん。岐阜市島の住居に併設した店舗兼ベーカリーで焼き上げたパンを、週3~4回の頻度でメディアコスモスに売りにきている。多くの人々に知ってもらいたいとの思いで、出張販売しているのだ。

同じく岐阜大学に留学していたインドネシア人男性と日本で結婚し主婦をしていた彼女は、日本に住む友人たちがイスラム教の戒律から、気軽にパンを食べることができないことを知る。そこで、アルコール類や豚由来のゼラチン、乳化剤を用いない「ハラル対応」のパンを作って売ろうと決意し、パン教室に通うなどして2年前にパン店を開業。

来日して20年以上経ち日本語にも不自由しない彼女は、持ち前の明るさとバイタリティーで思い立ったら即実行するタイプ。パン店を開業したものの思ったように売れ行きが伸び悩むなか、店構えをカフェに業態転換すれば何とかなるだろう、客足が伸びるだろうと思い立ち市役所を訪ねたことが、現在の人気店へと飛躍するきっかけとなった。

3.本 題

岐阜市役所を訪ねたところ、当時出来たばかりのメディアコスモスにビジネスチャレンジ支援相談窓口があることを聞き、早速訪ねることに。そこには図書館司書とともに若い女性の相談員がおり、親しみやすく落ち着いた雰囲気に一安心しつつも、何とかカフェを早急に成功させたいと、勢いよくまくし立てて想いのすべてをぶつけたのだった。

相談ではこれまでの経緯を尋ねられるなかで、もっと強みを伸ばしてパン店に磨きをかける提案を受けた。また、人気のある美味しいパンのレシピ本や、パン店の経営に関する書籍をその場で勧められ、借りて読むことにした。ノウハウをしっかり自分のものにしたいと考えて、のちに書籍は購入して常に読み返しては日々の経営に役立てている。

子育てしながらの起業で苦労も多いなか、店舗の場所が集客に不利なことから移動販売を勧められて即実行。メディコスのほかイスラム教徒が集うモスクにも出張販売してリピート客を増やしている。また、通販には見せ方やパッケージも重要と聞き即実行。早速効果が出て、お取り寄せのオンラインショップも順調に売り上げを伸ばしている。

現在の売上は最大で60万円/月、これを150万円/月程度に伸ばし、相談当初の夢であったカフェベーカリーを開設するのが当面の課題。そして、日本全国でイスラム教徒の人が住みやすい環境となる様、食生活を通して寄与していくことが彼女の目標だ。

4.解 説

パン屋など、街の小さな食料品の製造・販売店は、食品流通業の合理化や競争の激化によって、苦戦を強いられています。コンビニエンスストアやショッピングモールの進出、大手資本によるチェーン店が増えていることが影響しているのです。

ご覧戴いたヌルジャナーさんは、自宅で店舗を開業し、小さいながらも小さいなりに、強みを活かした人気のパン店を育て上げることに成功しました。安心して暮らしやすい環境を提供したいとの想いから、情報収集と相談で足りない要素を補い、自ら積極的に販売に出向いて運命を切り拓いたことが、成功への分岐点になったと云えるでしょう。

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