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[シナリオ]Turning Point モノづくり編201 世の中のニーズを捉え 唯一無二の商品を開発!

2018.07.11

世の中のニーズを捉え 唯一無二の商品を開発!

 

鈴木工業株式会社(中津川市)

[全文公開]番組シナリオ

1.背 景

今年誕生し、ギフトショーなどの展示会に出展して以来、話題沸騰の商品がある。その名を Warm Tech Spoon といい、最新鋭の航空機のボディにも使用されている、ハイテク材料であるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を素材に用いたアイスクリームスプーンだ。

人工衛星や航空機の一部に用いられているCFRPのうち、熱伝導率(熱の伝わりやすさ)の高い、高価な材料を選定して、手に持つことで体温の熱が伝わり、硬いアイスクリームを簡単に溶かすことができ、冷凍庫から出してすぐに食べることができるという優れもの。

CFRPを食器の素材に用いることは世界初。日本衛生協会にて分析を行い、すべての項目で適合となっており、食器としての安全性はお墨付きを得ている。中部地域ではボーイングの機体製造や国産旅客機MRJなど航空機製造が注目される中、スプーンも注目を浴びている。

2.由 来

このスプーンを開発したのは中津川市の鈴木工業株式会社。1938年の創業以来、OA機器や家電用の金属プレス部品を中心に、大手メーカーの下請け加工を主たる事業としてきた。また、従来より自社開発した住宅用基礎型枠の製造販売や農業生産法人の経営も手掛けている。

円高の影響も受けて大手メーカーはアジアへ生産拠点を移転、また2008年のリーマンショック以降、売上高はピーク時の1/3にまで落ち込み、規模の縮小を余儀なくされるなか、作業改善の努力と独自の技術開発力とによって、何とか乗り越えて現在に至っている。

社長直結の企画開発室が2013年に発足。新たな方向性の模索をしていたところ、現場改善から、掲示物を簡単に脱着できる第一号の開発商品「スゴ技バインダー」が誕生した。この機運を自社の新たな事業の軸にしていきたいとの想いから、Warm Tech Spoon は生まれた。

3.本 題

これまでの商品開発の経緯では、自社の技術で何ができるか、他社の成功事例に何があるか、といった視点から新商品や新分野への進出を図ってきた。しかしながら今回は、世の中のトレンドを知り、購買ターゲットを設定し、その人々のライフスタイルにまず着目した。

そうした経緯を踏まえた上で、自社の技術を用いて何が提供できるかという、従来とは逆転の発想で商品開発に取り組んだ。素材の選定では、初めはこれまで扱ってきた金属で検討を進めたが、素材の性質である熱伝導率という観点から、CFRPを選定したのだった。

部品加工の観点から技術的な要素を検討しただけでなく、実際の熱の伝わり方、アイスクリームの溶け具合、食べやすさ、見た目の美しさなど、使う側の視点に立って開発にあたった。この顧客視点で考えて積み重ねた努力が功を奏し、展示会出展でメディアにも取り上げられる至った。

4.解 説

部品加工を行う製造業は、完成品メーカーが安い労働力を求めて海外に進出したことや、海外から部品が輸入されてくるようになったことから、売上規模が縮小しています。協力工場として与えられた図面に忠実に、低コストで安定した品質の部品を加工することは強みですが、自社で付加価値の高い完成品を開発して販売する経験はありません。

ご覧戴いた鈴木工業の多賀さんは、商品を開発する中で、まず市場の動向を調査し、消費者の視点を取り入れることで、多くの熱い注目を集める新商品の開発に至りました。環境の変化に立ち向かい、「自社で何ができるか」から「世の中で何が求められるか」との、逆転の発想で商品開発したことが、成功への分岐点になったと云えるでしょう。

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