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[シナリオ]Turning Point モノづくり編103 "原点回帰の発想"で奇跡の復活!

2018.07.21

"原点回帰の発想"で奇跡の復活!

 

株式会社田中金属製作所(山県市)

[全文公開]番組シナリオ

1.背 景

一万円もするシャワーヘッドが二日の店頭販売で完売するという。お肌の美容に気を使う女性が主なターゲットだ。当社の開発した商品は、シャワーヘッド本体に空気穴が開いており、水に空気を混入させて出すことによって、細かい泡を発生して肌の洗浄効果が高いというのがその特徴だ。

水圧を下げることなく節水の効果が50%もあることから、水道光熱費の高騰からランニングコストを下げたいと考えるホテルや温浴施設、ゴルフ場、飲食店などに向けた業務用としてもヒットを続けている。水道代が年間250万円も削減できたという温浴施設もあるほど、その効果は高い。

最近では、水不足に悩む海外諸国でも注目されている。シンガポールには田中社長自ら乗り込み、ホテルやエステ店などを回って営業を掛け、手応えを得てきた経験をもつ。また、節水洗濯機がヒットするなどしている中国市場もこれから開拓する市場として、田中社長は高く注目している。

2.由 来

山県市美山町は日本の水栓バルブ発祥の地と云われており、シェアも40%と全国一を誇る。最盛期には150社ほどのバルブ関係会社や下請け企業があり、田中金属製作所もその一つ。20人ほどが働く当社でも、長年に渡って下請け企業として水道部品を機械加工してきた歴史を持つ。

同業他社で5年間修行ののち父親が始めた会社を継ぐために戻り、リーマンショックを経験して仕事量が激減し、何とか下請けから脱却しようと異分野も含め数々の自社商品の開発に取り組むも、なかなかヒットに結びつかなかった。もうどうしようもない苦況に追い込まれていた。

試行錯誤の末に出来上がったのは、従来の水栓バルブの技術を活かしたシャワーヘッドだった。異分野の商品市場にも進出しようとしたが自社の強みを発揮することができず、改めて自社が誇る原点としての水栓バルブの技術に回帰して、マイクロナノバブルシャワーは生み出された。

3.本 題

節水力を誇る従来の商品はシャワーの穴を小さくしたり、内部の水量調整バルブを小さくするといった節水方法であったが、十分な水圧が得られず不評であった。当社の商品アリアミストは本体に空気穴を開けることによって、空気を含んだ柔らかなシャワーで快適性もキープ。

優れた商品は開発できたが、設定価格の高さもあってなかなか売れない。販売を取扱店任せにしており商品は店舗に並べられているだけで、自分にはお客様の顔が見えていない。これを打開するためには、自ら店頭に立って商品の魅力を一人ひとりに伝えていくしかないと悟った。

そこで、商品供給にとどまらず田中社長自ら売り場に立って実演販売に乗り出すことに。初の実演販売は2012年12月のこと。比較的集客力が低い店舗であったが予想を反して二日で完売。これが功を奏して各店舗での実演販売の機会を得られることとなり、ヒットに繋がった。

4.解 説

中小の部品メーカーは技術力が高くても、お客様との接点がありません。ですから、自社の強みを発揮しオリジナル商品を開発することは、なかなか難しいのが現状です。ご覧戴いた田中社長は逆境に直面するなかで、水道部品の精密加工という自社の強みを活かして、自社商品となるシャワーヘッドを開発しました。

そして、人任せにすることなく、勇気を振り絞って自ら売り場に出向いて実演販売したことで、ヒット商品に育て上げることに成功しました。環境の変化に適応しつつ、原点に回帰する発想、そして強い信念で自ら運命を切り拓いたことが、成功への分岐点になったと云えるでしょう。

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